PCリプレイスはなぜ必要? 実施すべきタイミングや注意点を解説

最終更新日: 2025年2月10日




業務用のパソコン(PC) は、経年とともに劣化していきます。PCの寿命は5年程度といわれており、定期的なリプレイス(買い替え)が必要です。

OSがWindows 10の場合、2025年10月14日(米国時間)にサポートが終了するという問題点もあります(※)。
セキュリティ対策の観点からも、適切なタイミングでPCリプレイスを実施しましょう。

この記事では、PCリプレイスの目的やメリット・デメリット、実施すべきタイミング、必要な準備や注意点について解説します。

navigate_next※参考:IPAセキュリティセンター.「Windows 10のサポート終了に伴う注意喚起」

PCリプレイスとは? PCが故障する前に買い替えること

PCリプレイス(replace)とは、PCリプレースとも表記し、業務用のPCを新しいものに買い替えることを指します。一般的なPCリプレイスでは、故障や不具合の有無にかかわらず、一定の年数が経過したPCを一斉に交換します。

まだ使える状態のPCをなぜリプレイスするのか、疑問に思う方もいるでしょう。

PCは多くの小さな部品でできた精密機器です。経年とともに熱や湿気、ホコリ、落下による衝撃などの影響を受け、部品の劣化が進んでいきます。

PCを長く使い続けると、ある日突然動作しなくなり、業務に支障が生じるかもしれません。PCの保証期間が過ぎている場合は、メーカーでの有償修理が必要なため、修理料金もかかります。

そのため、ほとんどの企業が定期的にPCリプレイスを実施しています。特にWindows 10のサポート切れが近づくにつれて、新しいPCへの買い替えを検討する方が増えるでしょう。

PCリプレイスを定期的に実施する3つの目的

PCリプレイスを定期的に実施する目的は3つあります。

  1. PCは経年とともに劣化し、故障リスクが増大するため
  2. PCが故障してから対応すると余分なコストがかかるため
  3. OSのサポート終了に伴い、セキュリティリスクが高まるため

PCは経年とともに劣化し、故障リスクが増大するため

PCは経年とともに劣化し、故障や不具合が起きやすくなります。一般的なPCの場合、導入後5年経つと製品寿命が近づき、ユーザーが性能の低下を感じやすくなるといわれています。

特に以下のような症状が見られる場合は、早急にPCリプレイスを検討しましょう。

  • フリーズ(動作が突然停止すること)が増えた
  • 勝手に再起動するようになった
  • バッテリーの駆動時間が減った
  • 使用中にPC本体が高温になる
  • ファンやストレージ(HDDやSSD)から異音がする

PCが故障してから対応すると余分なコストがかかるため

PCの故障や不具合が発生してから対応を検討すれば良いと考える方もいるでしょう。

しかし、導入後時間が経ったPCは、メーカーの保証期間が切れている場合がほとんどです。保証期間の延長サービスに加入している場合も、通常は購入から3~5年ほど経つと、無償での修理ができなくなります。

長期間リプレイスを行わない場合、性能が低下したPCを有償で修理しなければなりません。
古いPCをメンテナンスして使い続けるよりも、最新のPCに入れ替えた方がメリットが大きいことから、多くの企業がPCリプレイスを実施しています。

PCが故障してから対応すると余分なコストがかかるため

PCにインストールされたOSには、ベンダーによるサポート期間が設定されています。例えば、Microsoft社が提供するWindows 10の場合、2025年10月14日(米国時間)にサポートが終了します(※)。

一般的にサポート切れのOSでは、危険性の高い脆弱性が新たに見つかっても、セキュリティ更新プログラムが配信されません。サポート切れのOSを使い続けると、脆弱性を悪用したサイバー攻撃を受け、情報漏洩や意図しないサービス終了などの被害に遭うリスクがあります。

またOSのサポート切れに伴い、対象のOS向けのソフトウェア(サードパーティ製のブラウザやメールソフトなど)のサポートも順次終了していくことが予想されます。そのため、OSやソフトウェアのサポートが切れるタイミングに合わせて、PCリプレイスを実施する企業が一般的です。

navigate_next※参考:IPAセキュリティセンター.「Windows 10のサポート終了に伴う注意喚起」

PCリプレイスを実施するメリット・デメリット

PCリプレイスを実施する前に、メリットだけでなくデメリットを把握しておくことも大切です。ここでは、PCリプレイスのメリット・デメリットを紹介します。

メリット:PCのパフォーマンスが改善し、業務効率が高まる

PCリプレイスは、業務効率化の観点からもメリットが大きい取り組みです。

業務に使用するソフトウェアは、日々アップデートや機能追加が行われ、要求スペックが増大しています。古いPCは最新型のモデルと比べると、CPUやメモリなどのスペックが不足しており、ソフトウェアの動作が遅く感じられる場合があります。

特にCPUは、PCのパフォーマンスに与える影響が大きいパーツです。CPUの世代(開発世代)が新しいものにリプレイスすることで、PCの処理速度が改善され、業務効率を高められます。例えば、大容量のファイルをPDFに変換する作業や、動画のエンコード作業などを行う際にPCのスペック向上を実感できるでしょう。

また新しく開発されたCPUには、電力効率を高める技術が使用されています。CPUの世代や品番によっては、消費電力量の削減にもつながります。

デメリット:適切に実施しないとデータを削除してしまう可能性がある

一方、PCリプレイスにはさまざまなリスクもあります。

例えばPCリプレイスの方式にもよりますが、作業完了後は古いPCを回収(および破棄)する場合が多く、後からデータの移行漏れが発覚しても復旧がほぼ不可能となってしまいます。

また旧PCからのデータ移行や業務ソフトの初期設定など時間や手間のかかる作業が付随することも多く、業務の停滞に繋がってしまうケースも少なくありません。

PCリプレイスを実施するメリット・デメリット

PCリプレイスを実施すべきタイミングは3つあります。

  1. OSのサポート期限が終了するタイミング
  2. PCの保証期間が終了するタイミング
  3. PCの法定耐用年数が経過するタイミング

OSのサポート期限が終了するタイミング

1つ目は、OSのサポート期限が終了するタイミングです。

情報処理推進機構の調べによると、2024年1月から2024年9月までの期間に、Windows OSの脆弱性の悪用を確認されたとする情報が15件報告されています(※)。しかし、OSのサポートが終了すると、基本的にベンダーによる脆弱性への対応は行われません。

WindowsやmacOSなど、お使いのOSのサポート切れのタイミングに合わせて、PCリプレイスを実施すると良いでしょう。

navigate_next※参考:IPAセキュリティセンター.「Windows 10のサポート終了に伴う注意喚起」

PCの保証期間が終了するタイミング

2つ目は、PCの保証期間が終了するタイミングです。

PC本体や出荷時に付属していた周辺機器は、保証期間内であれば、メーカーによる無償修理を受けられます。通常、無償修理が可能な期間は1年 程度、延長保証サービスを利用した場合でも3~5年です。

PCの保証期間が終了すると、以後は有償での修理が必要になるため、新しいPCへのリプレイスを検討すると良いでしょう。

PCの法定耐用年数が経過するタイミング

3つ目は、PCの法定耐用年数が経過するタイミングです。

PCなどの業務用の資産は、税務上は減価償却資産と呼ばれます。購入にかかった費用は、法定耐用年数の全期間にわたって分割し、必要経費として計上できます。

財務省令の別表によると、サーバー用のものを除くPC(電子計算機)の法定耐用年数は4年です(※1)。購入後4年経つと、PCを減価償却できなくなるため、リプレイスに適したタイミングです。

なお、購入費用が10万円未満のPCは消耗品の扱いになるため、減価償却できません(※2)。その年分の必要経費として、まとめて計上する必要があります。

navigate_next※1参考:国税庁.「主な減価償却資産の耐用年数表」p1

navigate_next※2参考:国税庁.「No.2100 減価償却のあらまし

PCリプレイスに用いられる4つの方式

PCリプレイスには、主に以下の4つの方式が用いられます。

  • 一括移行方式(ビッグバン方式)
  • 並行移行方式(パラレル方式)
  • 試行方式(パイロット方式)
  • 段階移行方式

一括移行方式(ビッグバン方式)

一括移行方式(ビッグバン方式)は、その名の通り、PCを一括でリプレイスする手法 です。

トラブルがなければリプレイスに関連する作業が一度きり、かつ短期間で完了するため、他の方式と比べ作業工数や実務時間の短縮に優れています。 一方、期間あたりの作業量が膨大になる他、トラブル発生時の被害が大規模になる傾向にあります。

並行移行方式(パラレル方式)

並行移行方式(パラレル方式)は、一定期間は 古いPCと新しいPCを同時に稼働させ、動作検証やトラブル時のバックアップとする手法です。

一括移行方式と異なり、リプレイス後も古いPCが利用可能なためトラブル発生時のフォローが容易な他、新しいPCのセットアップ中は古いPCで業務を進めることが可能で、業務継続性に優れています。ただし、新旧のPCを同時に稼働させるため、管理の負担が増えやすく 、デスクも大きく占有してしまうというデメリットもあります。

試行方式(パイロット方式)

試行方式(パイロット方式)は、先に一部のPCでリプレイスを実施し、トラブルがないかテストする方式です。運用状況に問題がなければ、全社的に移行を行う手法です。

実務運用での検証を行うことができ、万が一のトラブル時も小規模で済むため安全性に優れています。
一方、一括移行方式のようなスピード感はなく、検証と並行するためスケジュールが掴みづらく、全体としてのリプレイス完了までの期間が長期化してしまうことがデメリットです。

段階移行方式

段階移行方式は、部署やチームなどの単位で区切り、段階的にリプレイスを進めていく手法です。

メリット・デメリット共にパイロット方式と近い手法ですが、

  • 検証は別で行うため別途工数が必要
  • 部署などの単位毎でスケジュールを定めるため期間が掴みやすい

という違いがあり、どちらがより適しているかは運用や工数予算などによって異なります。

PCリプレイスを実施する際の準備と手順

ここでは、PCリプレイスの手順を4つのステップに分けて解説します。

  1. データをバックアップする
  2. ログイン情報の引き継ぎをする
  3. 新PCのキッティングをする
  4. 旧PCからデータを移行する

データをバックアップする

まずは万が一の事態に備えて、リプレイスするPCのデータをバックアップしましょう。リプレイス作業後にデータが必要となったり、操作を誤ってデータを削除してしまったりするリスクがあるからです。

主なバックアップの手段として、USBメモリなどの外部メディアにデータをコピーする方法や、クラウドストレージサービスを活用する方法があります。

ログイン情報の引き継ぎをする

次にPC本体や、使用するソフトウェアのログイン情報(IDやパスワードなど)の引き継ぎを行います。

手作業でログイン情報をまとめると手間がかかるため、Windows Serverに標準搭載されたActive Directory(アクティブディレクトリ)などのツールを活用し、ログイン情報を一元管理することが一般的です。

新PCのキッティングをする

新しいPCが納入されたら、キッティングを行います。キッティングとは、“パソコン(PC)やタブレットなどのIT機器をユーザーがすぐに業務に使えるようセットアップする作業”です(※)。

キッティングには、一台当たり3~4時間 かかるといわれています。新しいPCへスムーズに移行するには、キッティング作業をどのように効率化するかが重要な課題となってきます。

navigate_next※出典:厚生労働省 職業情報提供サイト.「キッティング作業員(PCセットアップ作業員)」

旧PCからデータを移行する

キッティングが完了したら、旧PCからデータを移行します。主な移行方法として、以下のような種類があります。

  • USBメモリなどの外部メディアを使用する
  • クラウドストレージサービスを利用する
  • ネットワーク(LAN)経由でファイルを共有する
  • データ移行ソフトウェアを利用する

PCリプレイスを実施するときの注意点

PCリプレイスを実施するときの注意点は2つあります。

  1. 想定以上に時間がかかる可能性がある
  2. PCの台数が多い場合はキッティングの効率化が必要
  3. 想定以上に時間がかかる可能性がある

    PCリプレイスには、想定以上に時間がかかる可能性があるため、余裕を持ってスケジュールを立てましょう。例えば、バックアップするデータのコピーに時間がかかったり、新しいPCの納入が遅れたりと、さまざまなトラブルが起きる可能性があります。

    業務への影響を最小限に抑えたい場合は、一度に入れ替えるPCを減らす試行方式(パイロット方式)や、段階移行方式を採用すると良いでしょう。

    PCの台数が多い場合はキッティングの効率化が必要

    PCの台数が多い場合は、キッティングの効率化が欠かせません。キッティングを1台ずつ行う場合、作業時間の目安は3~4時間 です。例えば、200台のPCをリプレイスする場合、キッティングが完了するまで600~800時間かかります。

    キッティングの効率化に役立つツールの一つが、デプロイツールです。デプロイツールでは、キッティングの見本となるマスターPCを用意し、同じ設定を複製(デプロイ)するため、工数を大幅に削減できます。

    キッティングツールを導入してPCリプレイスを効率化しよう

    PCリプレイスは、深刻な故障や不具合が起きる前に、PCを新しく買い替えることを指します。Windows 10のサポート切れが近づいているため、PCリプレイスを検討している方も多いでしょう。

    PCリプレイスには、データのバックアップやログイン情報の引き継ぎなど、さまざまな工程があります。特に時間がかかるのが、新しいPCをセットアップする「キッティング」です。

    キッティングの効率化なら、Actiphy Rapid Deploy -REをぜひご利用ください。PCにUSBメディアを差し込むだけで、誰でも簡単にキッティングを行うことが可能です。

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